新社会人に伝えておきたいプレゼンの極意

社会人になると「プレゼン」という場はもちろん、ちょっとした報告や社内セミナーなど、人前で何かを喋る機会が生じます。その際に意識しておきたいことをまとめてみました。

なお、属している企業やコミュニティによって文化やしきたりが異なるため、あくまでもひとつの理想系として参考にしてください。

今回の記事はアドビ社のPR企画「みんなの資料作成」に参加して執筆しています。

この記事内の目次

1 | プレゼンの準備時間の理想的な配分

プレゼンの準備を効率良く進めるためには、準備に必要な工程を知り、時間配分を工夫する必要があります。

プレゼンは、次の3つに分解することができます。

  • シナリオ作成
  • スライド制作
  • トークを含めたリハーサル

プレゼンに慣れない段階では、PowerPoint(やKeynote)を使ったスライド作りに没頭してしまいがちです。

しかし、時間をかけるべきなのは「シナリオ作り」。シナリオ作りとは「何を、どの順番で話すのか」を決めることです。

シナリオをおろそかにしたままでPointPointを開いてしまうと、どんなスライドを作るべきかの方向性を決められず、時間を浪費してしまいます。

「プレゼン開始の数分前に(スライドが)完成した!」は望ましい状況ではありません。スライド完成後のリハーサルは必須です。なぜなら、リハーサルをすることで、シナリオやスライドの改善点がわかり、リファイン(洗練化)を進められるからです。そうして、プレゼン全体にいわば“魂を入れていく”のです。

よって、プレゼンの準備で徹底したいのは、以下の2点です。

  1. スライド作りに取り組む前に、じっくりとシナリオを作り込む(スライドは頭の中のイメージに留め、まずは喋りながらイメージを深めていく)
  2. スライドが完成したらリハーサルを繰り返し、シナリオやスライドを微調整する

2 | すべてのプレゼンは2つのスタイルに分かれる

すべてのプレゼンは、大きく以下の2つのスタイルに分けられます。

  • [A]スライドがメイン
  • [B]トークが「メイン」、スライドは「サブ」の扱い

どちらの方向性にするかは、会社の文化・流儀などにもよりますが、同じシナリオ・同じトークでも、プレゼンスタイルによってスライドの作り方が大きく変わってきます。

[A]スライドだけを見て理解できるもの

プレゼンは、実際の目の前にいる人だけに行うものではありません。提案者であるプレゼンター不在で、後日、社内での伝達が生じることがあります。

その場合には、スライドだけを見て理解できることが必須です。ただし、10ページ以上にわたるスライドよりも、数枚に簡潔にまとめた資料の方が有効です。

なお、聞き手が「メモを取らずとも全部書いてある」ことで安心するタイプの場合には、[A]が望ましいしょう。

[B]トークが「メイン」でスライドは「サブ」の扱い

次のような場面を思い浮かべてみてください。

  • がんばって話しているのに、聞き手が手元の資料を見ることに没頭している
  • シナリオの中で盛り上がるポイントや伏線回収のポイントを用意したのに聞き手が手元の資料を読み進めてしまった結果、ネタバレしてしまっている

…考えただけで、ツラくなります…

一口に「プレゼン」というと、スライドを使って話すことを思い浮かべる人が多いと思いますが、必ずしもスライドはマストではありません。

学生時代、むちゃくちゃ話のうまかった先生がいるでしょう。その先生はPowerPointを使っていなかったでしょうし、黒板を使って説明する際も、一言二言しか書かなかったと思います。

主役は話者である“あなた”、スライドはあくまでも脇役であるべきです。

トークをメインにプレゼンをする場合、スライドに盛り込む要素を極力減らし、トークのリズムに合わせてスライドの枚数を調整した上で、矢継ぎ早にスライドをめくりながら進めていくとよいでしょう。

なお、この[B]のスタイルには副次効果として次のようなメリットがあります。

  • 「聞いていること/見ているもの」が一致するため、話が入ってきやすい
  • 「いま、ここのことを話しています」を提示する必要性が減る
  • 変化が早いため、聞き手が飽きにくい

[B]のスタイルで効果的なプレゼンのサンプル動画を貼っておきます。ぐいぐい引き込まれ、飽きさせない構成に着目してみてください!

3 | 聞き手への配慮(1)適度な丁寧さで話す

プレゼンで話すことは「デリバリー」と呼ばれます。

「デリバリー」と聞くと思い浮かべるのは宅配ピザ。郵便と異なり、宅配ピザは相手に手渡しすることで完結します。プレゼンも「ただ、話す」だけなく、聞き手にきちんと届いて完結します。

はじめてプレゼンの場に立つとなると、誰でもガチガチに緊張します。そのとき、覚えておいて欲しいのは「プレゼンは一方通行のコミュニケーションではない」ということ。ただ伝えるだけであれば動画で済みます。

聞き手を前に台本を読み上げるのではなく、聞き手への対話の一環としてプレゼンするのが理想です。

その際、聞き手が快適に感じるトークを心がけることが大切です。そこで、プレゼンのトーク時に避けたい、過剰で冗長な2つの言い回しを取り上げておきます。

「〜になります」→「〜です」

「AがBに変化する」場合を除き、「〜になります」は冗長です。「〜です」で十分です。

「〜させていただきます」→「〜いたします」

「させていただきます」という表現は、この表現の是非をテーマに何冊も本が出ているくらい奥深い問題です。その是非はここでは論じませんが、ほとんどの場合「〜いたします」で十分に丁寧さは伝わります。

「〜だと思います」→「〜です」「〜と考えます」

日常生活では強い主張や言い切りを避け、やんわりと「ぼかし表現」を使うことが多いのですが、プレゼンはあなたの主張を伝える場。自信を持って「〜です」「〜と考えます」と伝えましょう。

その他の過剰な敬語

聞き手との関係性によっては「〜ございます」といった表現が過剰になるケースも多いです。

社風や場面にもよりますが、「聞き手個人と会話するときに使わない敬語は不要」とし、極力、会話の延長のような自然体で喋る方が聞きやすいでしょう。

4 | 聞き手への配慮(2)適切なスピードをコントロールする

プレゼンやセミナーの聴衆側に立つと、「読み切る前に話が進んでしまった」という経験を持つことがあります。これは結構なストレスです。

プレゼンする側はスライドの内容を理解していますが、聞き手にとっては初見。スライド上の文字を追うだけでも時間がかかりますし、話を聞きながら内容を理解するとなると大きな負担です。

スライドを用いたプレゼンでは、トークのスピードが早すぎないか、聞き手を置き去りにしていないか気を配りましょう。スライドの調整も検討してみましょう。トークのスピードが早い場合は、以下のようにスライドの調整を検討します。

  • スライド上の文字を(極力)減らす
  • 少しでも目線の移動を減らすために、文章内の改行位置を工夫する

「箇条書き」している内容を図解化するのも有効です。箇条書きは便利なため、つい使いがちですが、要素同士の関係性を伝えづらいデメリットがあります。

改行位置を工夫する際のポイント

改行位置を整えることで、目線の移動の負担を軽減できます。

以下の左右のスライドを見比べてみてください。

説明するまでもなく、読みやすいのは右のスライドです。

普通に作ると、左のスライドのように幅に応じて自動で文字が折り返します。一方、右のスライドでは、意識的に改行しています。

左のスライドでは「ため」が途中で分割されるため、聞き手の頭のなかで「た」と「め」をつなげる処理が生じます。1秒にも満たない時間ですが読むスピードが下がります。

では、どこで区切ればよいでしょうか?

文章内で「ね」を入れられる箇所で区切るのがオススメです。この例でいくと次のようになります。適切に区切ると読みやすくなることを覚えておきましょう!

5 | PDFを用いたプレゼンのススメ

プレゼン資料の作成では主に次のツールが使われます。

  • PowerPoint
  • Keynote(macOSのみ)
  • Google スライド

これらのツールを使う場合、「ソフトをインストールしているPCが起動しない」「PCがプロジェクターに接続できない」など、不測の事態が起きると困ります。また、Google スライドの場合、ネットワーク回線によって表示が遅延したり、最悪開かなかったりすることもあります。

そこで準備しておきたいのが、プレゼン資料をPDF化してUSBメモリーに入れておくこと。PDFにしておけば、どんなPCでも開けます。

また、作成したアプリケーションにかかわらず、その見た目を保持したままでPDF化できますので、次のような場合には、より積極的に活用していきたいものです。

  • プロジェクトに関わるメンバーで使用しているOS、アプリが異なる場合
  • 長期間、資料として残しておきたい場合(PowerPointやKeynoteでは、バージョンが変わることで見た目が崩れてしまうこともある)

Adobe Acrobatを使ってプレゼンできるよう、主要なショートカットを知っておこう

いざというとき、Acrobatを用いたプレゼンができると安心です。そこで、Acrobatでのプレゼンで使えるショートカットを紹介しておきます。

まず、Acrobatでプレゼンを行う場合には「フルスクリーンモード」を使います。キーボードショートカットはWindowsはCtrl + L、macOSの場合には⌘ + Lです(LargeのLと覚えましょう)。

フルスクリーンモードでは、スライドを進めたり戻すのに、次のキーボードショートカットを使えます。

  • 次のスライド:Enterキー(returnキー)、→、↓、pagedownキー
  • 前のスライド:Shift + Enterキー(shift + returnキー)、←、↑、pageupキー
  • 最初のスライド:homeキー
  • 最初のスライド:endキー
  • ページ指定:Ctrl + Shift + Nキー(⌘ + shift + Nキー)

PDFファイルのファイル容量を圧縮しておこう

プレゼン資料によっては、PDFのファイル容量が大きくなってしまうことがあります。AcrobatにはPDFファイルを軽くする機能が用意されていますが、私がオススメしたいのはAdobe Acrobat オンラインツールを使うことです。

Acrobat オンラインツールへアクセスするには「PDF 圧縮」という検索ワードで検索するか、あまり知られていない技として、ブラウザーのアドレスバーに「CompressPDF.new」と入力する方法があります。

Acrobat オンラインツールの「PDF を圧縮」機能のページを開くと、次のどちらかの方法でファイルを圧縮できます。

  • A. ウィンドウ内に直接、圧縮したいPDFファイルをドラッグ&ドロップ
  • B. [ファイルを選択]ボタンをクリックして圧縮したいPDFファイルを指定

アップロードがスタートすると、[圧縮レベル]を「高」「中」「低」から選択する画面が開きます。

圧縮レベルが高いほどファイル容量は小さくなりますが、その分、画質が劣化します(主にビットマップ画像の画質が劣化します)。ファイル容量と画質とのバランスをとりながら、最適な圧縮レベルを選んでください。

なお、オンライン上にはデータは残らない設計になっています(ただし、アドビのアカウントにログインしている場合、クラウドストレージに保存されますので、データをストレージに残したくない場合は削除が必要です)。

6 | Acrobatのオンライン共有機能をスライドのブラッシュアップに利用する

スライドのブラッシュアップのために第三者のレビューを受ける場合、「PDFファイルをメールなどに添付して送信し、チェックバックをコメントとして書き込んで返してもらう」のはお互いに煩雑です。

そこで利用したいのがAcrobat オンラインツールの共有機能です。以下の手順でPDFを共有し、レビューを受けましょう。

  1. Acrobat オンラインツールにログインし、[ツール]一覧から[共有]をクリックします。
    以下はAcrobat オンラインツールにログインした状態の画面です。

  2. [共有するファイルを選択]ダイアログボックスが表示されたら、ファイルをドラッグ&ドロップするか、[ユーザーのデバイスからファイルを追加]をクリックして共有したいファイルを指定します。

  3. アップロードが完了したら、次のどちらかの方法で共有します。

    1. 名前から電子メールを入力:メールアドレスが事前にわかっているときに利用
    2. [リンクを取得]ボタン:メールやチャットで共有リンクを送信したいときに利用

パスワード保護を行うときにもAcrobat オンラインツールが便利

PDFをオンラインで共有するとき、念のためにパスワード保護を設定しておきたいときにもAcrobat オンラインツールを活用できます。

Acrobat オンラインツールへアクセスするには「PDF 保護」という検索ワードで検索するか、ブラウザーのアドレスバーに「protectpdf.new」と入力して、Acrobat オンラインツールの「PDFにパスワードを設定する(暗号化)」機能のページを開きます。

  1. PDFのファイル容量の圧縮と同様の手順でPDFを指定

  2. パスワードを入力

  3. 保護されたPDFをダウンロード

ダウンロードしたPDFファイルには、ファイル名の末尾に「-保護済み」というテキストが追加されます。

まとめ

プレゼンをする上で意識していただきたいことをまとめてきました。今回のノウハウが新社会人だけでなく、多くのビジネスパーソンの参考になれば幸いです。

最後にTipsをまとめておきますので、ぜひ復習してください。

  • スライド作りに取り組む前に、じっくりとシナリオを作り込む
  • スライドが完成したらリハーサルを繰り返し行い、シナリオやスライドを微調整する
  • 改行位置に気を配ると、スライドを見る人の負荷が減る
  • プレゼンはトークが重要、スライドは脇役としてトークに力を入れよう
  • スライドのブラッシュアップには、Acrobat オンラインツールの共有機能を使って他の人からレビューを受けるとよい

追記(2023年6月8日)

“スライドは「サブ」の扱い”について、むっちさんのツイートが参考になるので貼っておきます!