自分好みのIllustratorにするためにドキュメントプロファイルを活用しよう
普通にIllustratorを使うと「新規ドキュメント」には、過去の作業の履歴がまったく残らないため、毎回、スウォッチやアートワークを作り直したり、ほかのドキュメントからコピー&ペーストしたり、読み込むなど、“資産”を使い回すのが面倒です。
- デフォルトのフォントを変更したい
- 新規ドキュメントを開いたタイミングで[スウォッチ]パネルが自分好みになっていて欲しい
- せっかく作ったグラフィックスタイル(やシンボル)を新規ドキュメントですぐに使いたい
- 不安定な合成フォントを、ちゃんと使いたい
などの問題は、ドキュメントプロファイルを活用することで解決できます。つまり、自分好みのIllustratorに育てていくことができるのです。
ドキュメントプロファイルとは
[新規ドキュメント]ダイアログボックスで選択する「プリント」や「Web」、これが ドキュメントプロファイル です。
ざっくり言うと、Illustratorの新規ドキュメントは、ドキュメントプロファイルの複製です。
Macの場合、「/Users/(user name)/Library/Application Support/Adobe/Adobe Illustrator 23/ja_jp/」内にある「New Document Profiles」フォルダー内の.aiドキュメントがドキュメントプロファイルの正体です。
なお、新しい「新規ドキュメント」インターフェイスをお使いの方は、ダイアログボックスを少し下方向に伸ばして、[閉じる]ボタンの左上に見える[詳細設定]の文字をクリックすると、従来の「新規ドキュメント」インターフェイスが開きます。
もちろん、環境設定の[一般]カテゴリで[以前の「新規ドキュメント」インターフェイスを使用]オプションをオンにして、新しい「新規ドキュメント」インターフェイスが開かないようにするのも得策です。
Illustratorテンプレートとどう違うの?
Illustratorには、テンプレート(Illustrator Template)という機能があり、ドキュメントプロファイルと似ています。
テンプレートの拡張子は「.ait」。このファイル形式にしておくことでテンプレートして利用できるようになります。
どちらも、新規ドキュメントを作る際の「元」となりますが、ひとつだけ違いがあります。
ドキュメントプロファイルの場合には、アートボードのオブジェクト(やガイド)が新規ドキュメントに引き継がれないのです。
自分用のドキュメントプロファイルを作成する
慣れていない方には、ちょっとややこしいので、丁寧に説明します。
「New Document Profiles」をサイドバーに登録する
マストではないのですが、「New Document Profiles」をサイドバーに登録しておきましょう。
プロファイルの複製はもちろん、作成したドキュメントプロファイルに手を加えたいとき、すぐにアクセスできます。
[新規ドキュメント]ダイアログボックスの[プロファイル]ポップアップメニューの一番下の[参照…]をクリックする
「New Document Profiles」フォルダーが開くので、サイドバーに登録する
「New Document Profiles」がサイドバーに登録されたら、[キャンセル]ボタンを押して閉じる
ドキュメントプロファイルを複製する
Finderでドキュメントプロファイルを複製し、リネーム後にアクセス権を変更します(Illustratorを閉じる必要はありません)。
Finderで「New Document Profiles」フォルダーを開き、いずれかのドキュメントを複製する
ドキュメント名を変更する(スクリーンショットでは「プリント-sw.ai」)
[情報を見る]ウィンドウで[共有とアクセス権]のアクセス権を「読み/書き」に変更する
複製したドキュメントプロファイルをIllustratorで開いて編集する
この際、次のアラートが表示される場合には[OK]をクリック
ドキュメントプロファイルのカスタマイズ
デフォルトフォントを変更する
では、デフォルトフォント(やサイズ)を変更してみましょう。
複製したドキュメントプロファイルをIllustratorで開き、[文字スタイル]パネルの「[標準文字スタイル]」のフォントを変更します。
[ウィンドウ]メニューの[書式]→[文字スタイル]をクリックして、[文字スタイル]パネルを開く
「[標準文字スタイル]」をダブルクリックする
[文字スタイルオプション]ダイアログボックスが開くので、[フォントファミリ]や[スタイル](ウエイト)、[サイズ]などを変更する
[文字スタイルオプション]ダイアログボックスを閉じる
これだけではドキュメントを保存できないので、長方形を描画して削除するなど、何か作業します。
さらなるドキュメントプロファイルのカスタマイズ
オリジナルのドキュメントプロファイルには、次のような変更を加えることができます。
- 段落スタイル
- 文字スタイル
- スウォッチ
- シンボル
- グラフィックスタイル
- ブラシ
ドキュメントプロファイル上のオブジェクトは、新規ドキュメントに継承されないことを利用して、下記をドキュメントプロファイルにおいておけば、微調整のときに改めてテキストやオブジェクトを作成する必要がありません。
- 段落スタイルや文字スタイルを適用したテキスト
- グラフィックスタイルを適用したオブジェクト
- シンボルインスタンス
必要なときに、ドキュメントプロファイルの元ファイルを開いて、手を加えていけば、どんどん自分好みのIllustratorになりま す。
段落スタイルなどは、フォントサイズや行送りなどの設定情報を明記しておけば、一目瞭然ですし、チームで共有するときにも役立ちます。
シンボリックリンクを使っての応用
ドキュメントプロファイルは、「/Users/(user name)/Library/Application Support/Adobe/Adobe Illustrator 23/ja_jp/New Document Profiles」フォルダー内にあるため、操作によって「Adobe Illustrator 23」フォルダーごと消してしまうことがあります。
そこで、実際の運用としては次のようにするのがセオリーです。
- カスタマイズしたドキュメントプロファイルは、Dropbox内におく
- カスタマイズしたドキュメントプロファイルのシンボリックリンクを作成し、「/Users/(user name)/Library/Application Support/Adobe/Adobe Illustrator 23/ja_jp/New Document Profiles」に移動する
もちろん、「Adobe Illustrator 23」フォルダーごと、Dropbox内に移動し、そのシンボリックリンクを「/Users/(user name)/Library/Application Support/Adobe/」に置く方法もよいでしょう。
まとめ
- Illustratorの[新規]ダイアログボックスでプロファイルを選択すると、その複製のファイルが新規ドキュメントとして作成される
- 既存のドキュメントプロファイルを複製してもロックされているので編集できない。アクセス権限を変更する必要がある
- デフォルトフォントを変更するには、[文字スタイル]パネルの「[標準文字スタイル]」のフォントを変更する
参考になる記事
オマケ(ダイアログボックスをスキップするキーボードショートカット)
command + option + Nキー(control + Alt + Nキー)を押すと、[新規ドキュメント]ダイアログボックスをスキップして、直前に選択していたドキュメントプロファイルで新しいドキュメントが作成されます。
追記(2019年5月3日):
ドキュメントプロファイルには次の表示の有無の設定も記録できます。
- 定規
- ガイド
- アートボード(の枠)