WordファイルをInDesignにスムーズに読み込むワークフロー
この記事内の目次
以前にも掲載しましたが、時間も経ち、少し事情も変わっているので、改めて書いてみます。
ルールを守って執筆し、ちょっとだけ手間をかければ、配置するだけでInDesignでの作業が圧倒的に減ります。
- Wordでは「スタイル」を用いる
- 箇条書き、段落番号は「手がかり」として利用
- Bも避けたいが、Word内で置換して文字スタイルにするのが吉
- InDesignでWordを読み込んだときと同じ段落スタイルを用意しておけば「マッピング」が不要
下準備(1)Wordでのスタイル設定
Wordでは、デフォルトで「標準」というスタイルが割り当てられています。
「標準」のままでツールバーでフォントやサイズ、カラーなどの「書式」を使うのではなく、「見出し1」などのスタイルを用いるようにします。
Mac版は右側に、Windows版はポップアップさせておくと、スピーディに適用できます。
Mac版では[スタイルウィンドウ]をクリックします。
注意点
- 箇条書き、段落番号は、ツールバーで設定
- Bボタンは避けたいが、後述する方法で「文字スタイル」を設定するのが望ましい
Bボタン、Iボタンを適用した箇所を文字スタイルにする
Bボタンを適用した箇所を文字スタイルに置換します。
高度な検索と置換を用い、「(段落)スタイル:標準、フォント:太字」を「(文字)スタイル:強調文字」に置換します。
同様に、Iボタンを適用した箇所を文字スタイルに置換します。
マーカーに関しては、ちょっとやっかいです。
- WordファイルをInDesignに配置すると、太字や斜体などの情報が消えてしまうことへの対応方法 - DTP Transit
- Wordの文字飾り・文字色・蛍光ペンをInDesignの文字スタイルに反映する: mottainaiDTP
下準備(2)InDesignでのスタイル設定
スタイルマッピング機能は、ひと手間かかります。
InDesignで次の段落スタイルを作成し、書式などを定義しておくとシンプルでスピーディなワークフローが実現できます。
- Heading 1
- Heading 2
- Heading 3
- Heading 4
- Heading 5
- Normal
- List Paragraph
なお、List Paragraphは、段落番号バージョンを作成しておきます。
同様に、次の段落スタイルを作成し、書式などを定義します。
- Strong
- Emphasis
スピーディな設定方法
Wordにて適用できるスタイルをすべて使い、InDesignに持ち込むと次のように表示されます。
右側に表示されているアイコンは、スタイルを再定義すると消えます。
InDesignへのWordファイルの読み込み
次の手順でWordファイルをInDesignに読み込みます。
- [ファイル]メニューの[配置]をクリック
[配置]ダイアログボックスが開いたら、Wordファイルを選択し、[読み込みオプションを表示]オプションをチェックして[開く]ボタンをクリック
[Microsoft Word読み込みオプション]ダイアログボックスが開いたら、次の2つを設定して、[OK]をクリック
- [フォーマット]の[テキストと表のスタイルおよびフォーマットを保持]オプションを選択
- [スタイルを自動的に読み込む]オプションを選択
この際、次のスタイルに関しては、マッピング不要です。
- Normal
- Heading 1
- Heading 2
- Heading 3
- List Paragraph
対応表
カテゴリ | Wordの スタイル | InDesignの スタイル名 | HTML | 利用 |
---|---|---|---|---|
段落スタイル | 標準 | Normal | p | ✓ |
行間詰め | No Spacing | |||
見出し1 | Heading 1 | h1 | ✓ | |
見出し2 | Heading 2 | h2 | ✓ | |
見出し3 | Heading 3 | h3 | ✓ | |
見出し4 | Heading 4 | h4 | ✓ | |
見出し5 | Heading 5 | h5 | ||
見出し6 | Heading 6 | h6 | ||
表題 | Title | ▲ | ||
副題 | Subtitle | ▲ | ||
リスト段落 | List Paragraph | |||
引用文 | Quote | blockquote | ||
引用文2 | Intense Quote | |||
文字スタイル | 斜体 | Subtle Emphasis | ||
強調斜体 | Emphasis | em | ✓ | |
強調斜体 | Intense Emphasis | |||
強調太字 | Strong | strong | ✓ | |
参照 | Subtle Reference | |||
参照2 | Intense Reference | |||
リスト | 箇条書き | List Paragraph | ul/li | ✓ |
段落番号 | List Paragraph | ol/li | ✓ | |
強調 | B | なし | ||
I | なし | |||
B+I | なし |
後処理
InDesignでの微調整
Wordの段落番号には、箇条書きと同様の「List Paragraph」が適用されているため、次のように検索置換でスタイルを定義します。
段落スタイル「ol」は、「箇条書き:自動番号」を適用した段落スタイルです。
InDesignでオーバーライドを削除
すべてのテキストを選択し、[段落スタイル]パネルメニューから[オーバーライドを消去]を実行します。
キーボードショートカットは⌘ + option + shift + Oキーです(OはOverrideのO)。
画像フレームだけの行
画像フレームだけが入っている行を検索し、「行送り:自動」を適用した段落スタイルを適用します。
- 検索:^~a\r
- 置換:(空白)
- 置換形式:「段落スタイル:p.img」
グラフィックフレームの幅を揃え、配置画像をフィットさせる
オブジェクトスタイルが適用されていないグラフィックフレームに、オブジェクトスタイルを適用します。
- 検索オブジェクト形式:オブジェクト[なし]
- 置換オブジェクト形式:オブジェクトスタイル[]
- 種類:グラフィックフレーム
こちらがオブジェクトスタイルの設定内容です。
[サイズと位置のオプション]カテゴリの[サイズ]セクションの[幅]を「100」(mm)に設定
[フレーム調整オプション]カテゴリ
- [自動調整]をオン
- [サイズ調整]を「内容を縦横比率に応じて合わせる」
- [整列の開始位置]を「左上」に
この処理によって幅が100mmになりそうですが、実際にはなりません。そのため、次の処理を行います。
グラフィックフレームをフィット
すべてのページの、オブジェクトスタイルが適用されているフレームを次のスクリプトで「フィット」させます(フィット=[フレームを内容に合わせる])。
「●●●」には、対象となるオブジェクトスタイル名を入れます。
var oStyle = app.activeDocument.objectStyles.itemByName("●●●");
app.findObjectPreferences = app.changeObjectPreferences = null;
app.findObjectPreferences.appliedObjectStyles = oStyle;
var fund = app.activeDocument.findObject();
app.findObjectPreferences = app.changeObjectPreferences = null;
for (var f = 0; f < fund.length; f++) {
fund[f].applyObjectStyle(oStyle, true);
}
参照
このままでは、下方向にアキが生じるなど、高さがマチマチなので、次の処理を行います。
フレームの大きさをフィットさせる
Scale Graphicsというスクリプトを用います。
- [Relative]オプションをチェックする(2箇所)
- [Location]を「Document」に変更
- [Fitting]を「Frame to Content」に変更
- [Limit to Images]オプションをオンに
「ドキュメント内のグラフィックフレームを対象に、現在の縮尺のまま、フレームをコンテンツにフィットさせる」という意味合いです。