Illustrator 2020徹底検証(新機能、変更点、放置されていること)
Illustrator 2020がリリースされました。このバージョンから「CC」が消えてIllustrator 2020になっています。なんか居心地悪いですね…
さて、Illustrator 2020の変更点についてまとめました。
この記事内の目次
ドキュメントバージョンの変更
久しぶりにドキュメントバージョンが変更されました。
後述するスペルチェックがらみとのことですが、この程度のものでしたら、変更せずにいて欲しかった…
2018年リリース | 2019年リリース | |
---|---|---|
アプリ名 | Illustrator CC 2019 | Illustrator 2020 |
整数バージョン | 23 | 24 |
ドキュメント バージョン | Illustrator CC(レガシー) | Illustrator 2020 |
v.17 | v.18 |
「v.18」とはどこにも書いていないので、ドキュメントバージョンという考えはやめたのかもしれません…
バージョンの調べ方
なお、現在、Bridgeでは、作成バージョンのみ表示されます。
数バージョン前からmacOSの[情報]ウィンドウでは(作成バージョン、ドキュメントバージョンともに)確認できなくなっています。
スプラッシュスクリーン
今回は「花」。 でも、なんか華がないというか、個人的にはノー・サンキューな感じです。モチベーションぐっと下がる…
そろそろ選ばせて欲しい。せめて、オフにするオプションが欲しい。
新機能
おそらく、Illustrator for iPadに注力しているからでしょうか。新機能と呼べるようなものが一つもありません。
バックグラウンド保存/バックグラウンド書き出し
保存、および、書き出し操作をバックグラウンドで行えるようになりました。これは嬉しいですね。
環境設定の[ファイル管理・クリップボード]カテゴリ内でオン・オフできます(デフォルトはオン)。
いいかな〜と思ったけど、やっぱりダメかも。
こういうの出て、ちょっと煩わしい… どのボタンを押せばいいのか、毎回考えるし、自動的に消えてくれるわけでもない。
- [すぐに閉じる]をクリックして問題ないの?
- だったら[OK]ボタンとの差異は何?…
考えれば考えるほどわからないです。
よく考えたら、オフにする機能のないInDesignでがんばってオフにしてた。
パスの単純化
パスの単純化は、先月(2019年10月)の23.1で実装されています。オブジェクトを構成する一部のアンカーポイントを選択して実行することもできますが、[直線に変換]オプションをオンにすると、オブジェクト全体が対象になってしまうのは、従来と同様の仕様です。
せっかくの機能なので、[プロパティ]パネルやコントロールパネルにボタンがあってもよいのですが、ありません。コンテキストメニューには[単純化]として呼び出すことが可能です。
結構クレバーなんですが、Smart Remove Brush Tool、VectorFirstAidには及びません。
自動スペルチェック
スペルチェックは、これまでもありましたが、自動スペルチェックが可能になりました。
[編集]メニューの[スペルチェック]→[自動スペルチェック]をクリックして、オンにします(デフォルトはオフ)。
スペルミスがあると、ギザギザ線が付きます。
小文字で1文字だけのアルファベットも対象になるなど、アイコンフォントも対象になります。これは困る… つきましては、自動スペルチェックはデフォルトでオフがよさそう。
パフォーマンス改善
地味ながら、パフォーマンス改善に力を入れているようです。ただし、体感での変化は微妙。
- 画像やオブジェクトへの効果の適用(ぼかし、ドロップシャドウ、光彩 (内側/外側))
- ファイルを開く
- 新規ドキュメントダイアログボックス
- ホーム画面
ルーラー(定規)
環境設定の[一般]カテゴリに[すべてのドキュメントで定規を表示 / 非表示]オプションが付きました。
複数ドキュメントを開いているとき、定規の表示・非表示を一斉に行います。
Adobe MAX USでの紹介
キーノートでは、次の2つがさらっと紹介されました。
- レンダリングパフォーマンスの向上
- パスの単純化
変更点
メニューコマンドに整列が追加
メニューコマンドに整列が追加されました。これが一番の新機能かも!
もちろん、キーボードショートカットも設定可能です!!!
大発見!!! と思ったら、23.1から実装されていたようでした。宮澤さん、お〜まちさん、ありがとうございました!
23.1で修正された問題。になります。https://t.co/G9lRCF67Cw
— お~まち (@CS5_omachi) November 10, 2019
しかしながら、宮澤さんが指摘されているように、アンカーポイントの整列には対応していません。[オブジェクト]メニューにあるわけですから当然といえば当然ですが、詰めが甘い… やはり、[整列]パネルは必要そうです。
また、キーボードショートカットに使えるキーが拡張されているわけではありませんので、キーボードショートカットを設定できるといっても、空いているスロットはほぼありません…
バグフィックス
マスクオブジェクトの書き出し問題
リンク画像などをマスクしているとき、見た目ではなく、被マスクのオブジェクトの大きさで書き出されてしまう問題が解決されています。
長年、放置されてきたものが、なぜ、今???という感じですが、ありがたい。
ただし、[アセット]パネル上では昔通りです。
せっかくなら、[アセット]パネル上も直して欲しい。
フリーグラデーションへのライブカラー
前バージョン(Illustrator CC 2019)で搭載されたフリーグラデーションに対しても、ライブカラー(オブジェクトの再配色)を適用できるようになりました。
実現されなかったこと
効果のダイアログボックスの[プレビュー]オプションのオン・オフの記憶
[ドロップシャドウ]ダイアログボックスなどの[プレビュー]オプション。オンにしても、やはり覚えてくれません…
私の場合、こちらに関しては、Keyboard Maestroで解決しています。
[プロパティ]パネルでのテキスト関連の⌘ + クリックによる初期化
[文字]パネルでは、各項目のアイコンを⌘ + クリックして初期化することができます。ベースラインシフトなどの設定をクリアするのに重宝します。
[プロパティ]パネルが導入されて2年経ちますが、この機能はまだ実装されていません。
オブジェクトの一括選択(グローバル編集)
前バージョン(Illustrator CC 2019)と同様、テキストは選択対象外です。
あああまったく同じものでなく、おおよそ同じものを選択できたら最強なんだけど、全然手が入っていないところを見ると、「使われていないから、続きは開発しない」という悪いループにはまっているのかもしれません。
あと、[オブジェクト選択]は選択中に編集を行った場合、そのモードから抜けないと反映されません。リアルタイム編集できないと困る。
クリッピングマスク“からの”画像の切り抜き
Illustrator CC 2017で搭載された「画像の切り抜き」機能ですが、クリッピングマスク機能とまったく独立しています。連携すべきなのですが、される気配はありません。
個別ロック解除
こちらのツイートでは「Selective Unlock」(個別ロック解除)と記載されていますが、入らなかったようです… 残念。
The Illustrator MAX update brings the features you asked for! Your feedback drove us to add Path Simplification, Auto Spell Check, Selective Unlock and more.
— Adobe Illustrator (@Illustrator) November 4, 2019
Including... Illustrator for iPad! Coming in 2020.
Read about the release here: https://t.co/KnJUvQmnsC #AdobeMAX pic.twitter.com/VyXHq6ETNP
まだまだ、Xtream Pathの[個別アンロックツール]を重宝しそうです。しかしながら、私の環境では、[個別アンロックツール]を呼び出すとIllustratorがクラッシュします…
その他
ローカライズ
Illustrator 2020では「自動」カーニングが「メトリクス」カーニングになっています。
InDesignとPhotoshopに合わせた感じですが、「なぜ、いま!?」という感じです…
その他、苦労しているみたいですけれど、がんばって!
カスタム ツールバー | 環境設定 | |
---|---|---|
CC 2019 | 詳細設定 | 「コンテンツに応じる」既定値使用 |
2020 | 詳細 | コンテンツに応じた初期値を適用 |
望ましい翻訳 | すべてのツール | 「コンテンツに応じる」を初期値にする 「コンテンツに応じる」を規定値に使用 |
英語版 | Advanced | Enable Content Aware Defaults |
[グラデーション]パネルの「停止」はおかしいです…
英語版では[Stop]なんですが、これを「停止」と訳してはマズいですよね… というか、なぜ、劣化するの???
メニュー
なぜか[オブジェクト]メニューが変更されています。
- [分割・拡張]と[アピアランスを分割]が下の方に追いやられています。
- せっかくなら、[透明部分を分割・統合]も一緒にしたらよかったのに…
プラグインなど
次のプラグインは、Illustrator 2020に対応しています。
なお、 Astute Graphicsのプラグインは、サブスクリプションに移行しています。
また、FindReplaceという新しいプラグインがリリースされています。
SelectMenuは、まだ正式対応はしてませんが、アラートを切り抜ければ使えます。
リンク集
- 機能の概要 | Illustrator | (2019 年 11 月リリース)
- Illustrator 2020がリリースされました! #Illustrator #AdobeMAX - Adobe Blog
- Illustrator リリースにおいて修正された問題(まだアップデートされていません)
- Illustrator 2020アップデート:パフォーマンス強化ほか #Illustrator #AdobeMAX - Adobe Blog
- Adobe MAX 2019で発表された新しいCreative Cloudをサクッと確認 #AdobeMAX #CreativeCloud - Adobe Blog
- Fixed issues in Illustrator releases(英語)
Illustrator for iPad
単なる移植じゃないiPad版のIllustrator。非常に話題になっています。
これはすごすぎて声出たww
— 大石結花 // Yuka Ohishi (@yukaohishi) November 4, 2019
紙に描いたスケッチをめっちゃ綺麗なベクターに変換してくれる😂😭😂
Adobe Sensei パねぇっす!!#AdobeMAX #AdobePartner pic.twitter.com/pCoLSzIEwv
- 【速報】アドビ、iPad版Illustratorの開発を発表。Adobe Senseiがシェイプ構造を解析する新時代のイラストツール - ICS MEDIA
- ペン操作で驚くほど簡単に使えるiPad版「Illustrator」 課題は生産性にあり - ITmedia Mobile
- iPad版Illustrator先行体験。プレビューでもわかる使い勝手の良さ - Engadget 日本版
総合評価
ちょっと厳しい評価ですが、いろいろ微妙な感じです。一番嬉しいのは、メニューコマンドに整列が追加。
でも、Illustrator for iPadは期待大!!!
- スプラッシュスクリーン ★☆☆☆☆
- バックグラウンド保存 ★☆☆☆☆
- バックグラウンド書き出し ★☆☆☆☆
- パスの単純化 ★★★☆☆
- 自動スペルチェック ★☆☆☆☆
- パフォーマンス改善 ★★☆☆☆
- メニューコマンドに整列が追加 ★★★★☆
- Illustrator for iPad ★★★★☆